ポチ君からの手紙            


   ポチ君が亡くなってやがて一ヶ月になります。
つらく悲しい毎日でしたが、最近ようやくポチ君と暮らした日々を
懐かしく振りかえることができるようになりました。
(以下はポチ君の気持ちを代筆したものです)

ボクの名前は「ポチ・ブラームス」
オスの雑種犬です。
小さい頃は首輪を付けていたようですが、
迷子になったのか、それとも捨てられたのか、もう記憶にありません。

宮崎市内の、とある団地近くに住みつき、15年もの歳月が流れました。
若い頃には、ご近所の飼い犬に子供を産ませたことも何度かありました。
自由奔放の気ままな生活が、結構気に入っていました。

そんなボクに、餌をくれる人も数人いました。
野良にしては食べ物の好き嫌いもあり、結構グルメな生活をしていたのです。

ところが今年の1月末、
不覚をとって捕らわれの身となりました。
保健所のオリの中で震えているボクを、迎えに来たのがムー母さんです。
毎日餌をもらっていた人なので、恐る恐る付いて行きました。

保健所の人から
「今度野良になったら薬殺ですよ」 と言われていましたが、
以前の自由な生活が忘れられず、昼も夜も泣き続けました。
その度にお父さんとお母さんがお散歩に連れ出してくれますが、
温かい部屋の中より、寒い外の生活がボクには合っているのです。
ケージをガリガリかじって抵抗しても、食べ物やお薬を飲ませられるばかりで、
何度逃げようとしても、決してロープを外してはくれませんでした。

1ヶ月過ぎる頃、朝夕4回の散歩で用が足せるようになり、
ボクはようやく落ち着きを取り戻しました。

お父さんとお母さん、それにこの家の先輩犬と一緒に散歩できるのが
とても楽みになりました。
散歩途中でよその人に会うと、お母さんはいつも長話しをします。
話題はいつもボクのことばかりで、話しが終わるまでその場に寝そべって待っていました。
ボクはこの辺りではちょっとした有名犬になっていたのです。

楽しい毎日はずーっと続くものと思っていました。
でも、ボクの体は長年の野良生活で、あちこちボロボロになっていたのです。
農薬入りの田んぼの水を飲んだせいでしょうか…
ヤブ蚊にたくさん刺されたせいでしょうか…

餌がだんだん食べられなくなってきました。
それでもお母さんは、ボクの好きな物を次から次に食べさせようとするのです。
できることなら沢山食べて、お父さんやお母さんを安心させたいと思っているのに、
頑張っても頑張っても、その量は日増しに減っていくばかりです。

弱ってきたボクを車に乗せ、お散歩に連れて行ってくれるようになりました。息が苦しくなると草の上で休み、
気分が良くなるとようやく用を足すことができました。

ずっとお部屋で寝ていたボクも、
少し泣くとお隣の畑のテントに連れて行ってもらえるようになりました。
土の匂いと草のベットは、懐かしい匂いがして、何時間でもゆっくり休むことができるのです。
ベッドの横には、お父さん用のベットも並びました。
「まるでキヤンプファイヤーみたいだ!」 と言って添い寝をしてくれました。

お父さんの添い寝の三日目、
この家に来てまだ4ヶ月にもならないというのに
とうとうお別れの日がやってきました。
虫の声や鳥の声を聞きながら、静かに永久の眠りにつきました。

ボク自身がこの家を選び、
お父さんとお母さんに愛され、
この家の子供になれて本当に良かったと思います。
そして、ボクをあたたかく見守り応援してくださった方々にも、
心からお礼を言いたいと思います。

みなさん!
ほんとうにありがとうございました。

佐野ポチ・ブラームス 享年15歳


以上は天国から書きました。
ポチ
ポチ君が我家にやって来たばかりの頃に作った
  ”ここ掘れワンワンポチ君”です。
大判小判は出なかったけど、たくさんの思い出を残してくれました。
”ポチ君と暮らした日々” これこそ我家の宝物です。
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